トラック運転手が運送会社に就職する際、「雇入時の健康診断」というものを受診しなければなりません。
これは法令で定められているため、トラック運転手側としては淡々と受診するわけですが、その費用は本当に会社が負担してくれるのかどうか不安になります。
もちろん規定では「当然、事業者が負担すべきものであること」と定まっており、会社が負担すべきものですが、私のこれまでの経験上、そうではないこともあったので記事にまとめました。
雇入時の健康診断とは?
事業者と労働者の双方にとって、就業する上で支障がないことを確認するのが目的です。
これはトラック運転手という職種に限った話ではなく、一般的にどの職業でも実施されるものです。
以下のようにきちんと法令にて定められており、一般常識的に疑わない話です。
労働安全衛生規則(昭和四十七年労働省令第三十二号) ※抜粋
(雇入時の健康診断)
第四十三条 事業者は、常時使用する労働者を雇い入れるときは、当該労働者に対し、次の項目について医師による健康診断を行わなければならない。ただし、医師による健康診断を受けた後、三月を経過しない者を雇い入れる場合において、その者が当該健康診断の結果を証明する書面を提出したときは、当該健康診断の項目に相当する項目については、この限りでない。
一 既往歴及び業務歴の調査
二 自覚症状及び他覚症状の有無の検査
三 身長、体重、腹囲、視力及び聴力(千ヘルツ及び四千ヘルツの音に係る聴力をいう。次条第一項第三号において同じ。)の検査
四 胸部エックス線検査
五 血圧の測定
六 血色素量及び赤血球数の検査(次条第一項第六号において「貧血検査」という。)
七 血清グルタミックオキサロアセチックトランスアミナーゼ(GOT)、血清グルタミックピルビックトランスアミナーゼ(GPT)及びガンマ―グルタミルトランスペプチダーゼ(γ―GTP)の検査(次条第一項第七号において「肝機能検査」という。)
八 低比重リポ蛋たん白コレステロール(LDLコレステロール)、高比重リポ蛋たん白コレステロール(HDLコレステロール)及び血清トリグリセライドの量の検査(次条第一項第八号において「血中脂質検査」という。)
九 血糖検査
十 尿中の糖及び蛋たん白の有無の検査(次条第一項第十号において「尿検査」という。)
十一 心電図検査
e-Govウェブサイト
雇入時の健康診断はいつ受診するか?
会社としては、遅くとも入社してから1か月以内には受診させている状態を目指しますが、事務手続きとしては、内定をもらったらすぐに受診する、ということになります。
もう少し細かく言うと、内定の連絡を受けたら入社の最終的な意思表示をしなければなりません。
そして、入社予定日を会社と話し合いながら決め、入社に当たっての必要な書類を揃えることになります。その時に必要となる書類のひとつに健康診断書があって、すぐに健康診断を受診するようにとの指示があるという流れです。
この段階では、とにかくすぐに予約を取ることを最優先で動きましょう。
なぜなら、健康診断の予約は、時期にもよりますが取りにくいからです。
入社までに受診できるのがベストですが、受診日が入社予定日の後になる場合は、すぐに会社へ連絡した方がベターです。やはり入社してすぐは研修の日程が組まれていますので、その一言は大事です。
雇入時の健康診断の予約の仕方は?
会社に所属していた時の定期健康診断は会社から指示されますが、雇入時の健康診断については、本人が予約を取って受診します。
基本的に医療機関の指定はなく、どこでも自由に選んで差し支えありません。なので、自分の都合の良いところを選んで電話やサイトから予約を取ることになります。
健康診断にはいくつか種類がありますが、「雇入時の健康診断を受診したい」と言えば相手に伝わります。
その時に聞かれることは、検査結果の様式や検査項目が会社から指定されているかどうかです。
検査項目自体は法令で定まっているため特に問題になりませんが、会社によっては項目を追加することがあります。逆に言えば、検査項目を追加するような会社の場合は、会社指定の様式があるという感じです。
また、検査結果の受け取りまでには時間がある程度かかります。2~3週間くらいかかることもあるため、遅くなるようなら会社へ報告しておきましょう。
健康診断の受診日を予約する際に併せて確認すること
★検査結果(健康診断書)の受け取れる日はいつか。
・郵送してくれるのか。
・受領しに訪問するのか。
雇入時の健康診断の受診料はいくらか?
約8,800円~約15,000円と見込んでおけば大丈夫です。
私がこれまで受診した時の最も高額だったのは14,240円でした。
受診料の領収書の宛名は?
基本的に受診者名で領収書が発行されるはずです。
どこかの転職サイトに「会社名の領収書を発行してもらう」との記載を見かけましたが、そういう指示をする会社があるのか疑問です。少なくとも私はそのような会社に出会ったことがありません。
不安に思う方は、そもそも会社で費用を負担してくれるのかどうか。領収書の宛名は本人宛てで大丈夫か。この2点を受診前に確認しておけば間違いありません。
雇入時の健康診断の受診費用の負担は?
内定の連絡を受け、健康診断を受診する指示があった際、受診費用についても説明があってしかるべきですが、実際にはない場合もあります。
これは経験則となりますが、説明がなかった会社は、当然にして会社負担をするつもりなんだろうなと感じました。
ここでは、私の経験上、次の3パターンを紹介します。
会社が負担する一般的なケース
この会社では、入社してから健康診断を受診するよう指示があり、その際の受診費用は会社負担するとの説明がありました。
すぐに自分で病院を探して予約し、受診日が決まったら会社へ報告しました。そして、受診した翌日には領収書を会社へ提出しました。
この時点では立て替えが生じていますが、あらかじめ会社が負担してくれることが分かっているので、あまり気になりませんでした。
数日の社内での会計処理が済み、受診費用を会社から受領します。程なくして、自宅に健康診断書が郵送されたので、翌日には原本を会社へ提出して終了です。
この会社は手続き的には遅めだと感じます。結果として入社してから健康診断書を会社へ提出するまで、約1か月半くらいかかっていた気がします。
会社が負担するも立て替え期間が長いケース
内定の連絡を受け、健康診断を受診するよう指示があった際、受診費用は会社で負担はするが条件がある旨、説明がありました。
具体的には、受診費用の請求が試用期間を経過した後にならないとダメといったものです。
この会社には試用期間が3か月ありましたので、それまでは立て替えている状態というわけです。
もし、試用期間が過ぎる前に退職してしまうと自己負担となってしまう形です。
とは言え、その取扱が明確になっていますので、個人的には良心的な会社だと感じました。
自己負担のケース
面接の段階では説明なしで、こちらとしては会社負担が当然だと思っていたので聞かなかったけれど、内定をもらって入社の意思を示した後に知り、少し戸惑ったというケースです。
入社時の提出書類の中に承諾書があって、雇入時の健康診断の費用は自己負担であることを承諾する形です。
すでに入社の意思は示していて、そのことをもって辞退することはなかったので、そのまま受け入れることにはなりましたが、その会社に対しては今でもケチな印象しかないですね。
結果としてですが、その会社は別の理由ではありますが、退職することにしました。ある意味、そのような承諾書を書かせるということは、早期に退職する人がある程度は存在するため、会社の費用負担を少しでも減らすための措置なのかなと感じました。
雇入時の健康診断の受診費用は「原則として」会社負担
雇入時の健康診断の受診費用は会社負担が原則ですが、例外として自己負担をする場合もあるというのが結論です。
運送会社の資質を判断する目安のひとつ
憲法があって、法律があって、省令があって、規則があって、通達があって、内規があって、と世の中の決まりには段階があります。
当時の厚生省が発出した通達があって、この中で明確に「当然、事業者が負担すべきものであること」との記載があります。
通達の下位に当たるその会社の内規で自己負担を強いるというのは、多分、おかしいことなんだと思います。
だから、仮に訴訟を提起して会社を訴えれば、自己負担をすることの承諾書の効力を巡って争うことができる気もしますが、ここではこういう会社もあるということを知っておく方がいいかなという感じです。
確かに会社側からすると、すぐに辞めてしまう可能性が少しでもあるのなら、なるべく費用をかけたくないという気持ちも分からなくもありません。
なので、そこの議論は置いておくとして、あなたの選んだ会社がどういう内規で受診費用を取り扱っているのか、覚えておくに留めておけばいいかもしれません。
そういう細部にその会社の考え方が表れていると感じるからです。
ちなみに、私がこの会社をすでに去ったことは、言うまでもありません。